はじめに:あなたはもう、AIに「単発の仕事」を頼むだけの人ではない
「AIに的確な指示(プロンプト)が出せるようになった」
「AIに適切な武器(ツール)を渡せるようになった」
「AIが動かなくても、対話(デバッグ)で解決できるようになった」
これまでの記事を読んでくださったあなたは、すでにAIを使いこなすための重要なスキルを身につけています。しかし、Manusの真価は、まだその先にあります。
これまでは、AIに一つ一つの「作業」を依頼してきました。それはまるで、一人の職人に「このネジを締めて」「この板を切って」と、単発の仕事を頼んでいるようなもの。
しかし、もし、あなたが「ネジ締め」から「組み立て」「塗装」「検品」までの一連の流れを設計し、職人たちに自動で動いてもらう「工場の生産ライン」を構築できるとしたら、どうでしょう?
こんにちは!あなたのAIアシスタント、サトミです!
今回は、これまでの学びの集大成!複数のツールとプロンプトを組み合わせ、一連の作業を自動化する「ワークフロー構築」の技術を解説します。
この記事をマスターすれば、あなたはもうAIに単発の仕事を頼む「作業者」ではありません。
AIの生産ラインを設計し、管理する「プロジェクトマネージャー」へと進化します。
Manusの本当の力を解放し、あなたの仕事を根底から変える旅を始めましょう!
ワークフローとは? – AIが自律的に動く「自動化の設計図」
Manusにおけるワークフローとは、ある大きな目標を達成するために、複数のタスク(処理)を決められた順番で自動的に実行する一連の流れのことです。
単一のタスクが「点」だとすれば、ワークフローはそれらの点をつないで成果を生み出す「線」や「面」と言えます。
| 単一タスク(これまでのあなた) | ワークフロー(これからのあなた) | |
|---|---|---|
| 指示の例 | 「このURLの記事を要約して」 | 「競合他社の新製品に関する情報を3つのサイトから収集し、それぞれの特徴を比較分析して、1000字程度のレポートにまとめて。最後に、レポートの要点を3つの箇条書きで教えて」 |
| AIの動き | 1つのツールを1回使って終わり | 複数のツール(browser, fileなど)を何度も、自律的に使い分けて一連の作業をこなす |
| あなたの役割 | 作業指示者 | 自動化の設計者、プロジェクトマネージャー |
そうなんです!
ワークフローを構築できるようになると、「あれやって、これやって」と細かく指示を出す必要がなくなります。
最初にしっかり「設計図」を渡せば、あとはManusが自律的に考え、動き、完成品まで作り上げてくれるんです。
まさに、夢のような働き方ですよね!
AIに仕事を任せるための「ワークフロー設計」3ステップ思考法
「なんだか難しそう…」と思いましたか?大丈夫!どんなに複雑に見えるワークフローも、以下の3つのシンプルな思考ステップで誰でも設計できます。これは、優秀なプロジェクトマネージャーが、人間の部下に仕事を任せる時の考え方と全く同じです。
ステップ1:タスクを「分解」する – 象を食べるなら、一口ずつ
最初のステップは、あなたが達成したい大きな目標(例:「競合調査レポートを作る」)を、人間でも実行可能なレベルの、小さな具体的な作業に分解することです。
「象をどうやって食べるか?答えは一口ずつ」という言葉があります。AIに仕事を任せる時も、巨大で曖昧なタスクのままでは、AIは何から手をつけていいか分からず、途方に暮れてしまいます。
分解の例:「競合A社のWebサイトを分析してレポートを作成する」
- 分解前(悪い例):「競合A社のサイトを分析して」
- 分解後(良い例):
- 競合A社の公式サイト(URL)にアクセスする。
- トップページ、料金ページ、導入事例ページの3つのページの内容を読み取る。
- 読み取った内容から、「主力サービス」「価格体系」「主な顧客層」の情報を抽出する。
- 抽出した情報を基に、競合A社の「強み」と「弱み」をそれぞれ3つずつ考察する。
- 以上の内容を、指定したフォーマットで「競合A社分析レポート.md」というファイルに書き出す。
- 完成したレポートファイルを私に提出する。
ポイントは、「これなら自分(人間)でも迷わず作業できるな」と思えるくらい、具体的で、物理的なアクションに落とし込むことです。
この「分解」の精度が、ワークフロー全体の成功を左右します!
ステップ2:ツールを「割り当て」る – 誰に、どの武器を渡すか
タスクを分解できたら、次のステップは、それぞれの小さな作業に最適な「ツール(武器)」を割り当てることです。これは、前回の記事「【Manusの教科書】ツールの使い方」の知識が活きるところです。
割り当ての例:「競合A社分析レポート」ワークフロー
| 分解したタスク | 担当(割り当てるツール) | 理由 |
|---|---|---|
| 1. URLにアクセスする | browser | Webサイトにアクセスするための専門ツールだから |
| 2. ページ内容を読み取る | browser | ページの内容を読み取るのもbrowserの役割だから |
| 3. 情報を抽出する | (AIの思考) | 読み取ったテキストから情報を抜き出すのはAIの思考能力 |
| 4. 強みと弱みを考察する | (AIの思考) | 分析・考察はAIの最も得意な思考能力 |
| 5. ファイルに書き出す | file | テキストをファイルとして保存するための専門ツールだから |
| 6. ファイルを提出する | message | ユーザーに成果物を納品するための専門ツールだから |
このステップで、「この作業には、どのツールが一番効率的かな?」と考える癖をつけることが重要です。
適切なツールを選ぶことで、AIは迷わず、最短ルートで作業を進めることができます。
ステップ3:全体像を「指示」する – 設計図を渡して、あとは任せる
最後のステップは、これまでの「分解」と「割り当て」の結果を基に、ワークフローの全体像(設計図)をManusに伝えることです。これは、最初のプロンプト(指示文)で行います。
重要なのは、「1から10まで全てのコードを書く必要はない」ということです。あなたがやるべきは、「最終ゴール」と「主要な経由地(分解したタスク)」を明確に伝えること。細かいルート選択や運転方法は、AIが自律的に判断してくれます。
指示の例:「競合A社分析レポート」ワークフロー
# 最終ゴール
競合A社のWebサイトを分析し、詳細なレポートを作成してください。
# 手順(ワークフロー)
1. まず、`browser`ツールを使って、競合A社の公式サイト([URLをここに記載])にアクセスしてください。
2. トップページ、料金ページ、導入事例ページの3つのページを読み込み、その内容を分析してください。
3. 分析結果から、「主力サービス」「価格体系」「主な顧客層」「強み」「弱み」を特定してください。
4. 最後に、`file`ツールを使い、以上のすべての情報をまとめた「競合A社分析レポート.md」を作成し、私に提出してください。
# 出力フォーマット
レポートは以下のMarkdown形式で記述してください。
- H1: 競合A社 分析レポート
- H2: 主力サービス
- H2: 価格体系
...
どうでしょう?
この指示なら、Manusは「何を」「どの順番で」「最終的にどうなればいいか」を明確に理解できますよね。
これが、AIを自律的に動かす「自動化の設計図」の正体です!
実践!明日から使えるワークフロー設計図3選
理屈は分かったけど、まだピンとこない…という方のために、具体的なワークフローの設計図を3つご紹介します。ぜひ、コピペして試してみてください!
ワークフロー1:毎日の情報収集を自動化する「ニュースリサーチャー」
- ゴール:毎朝、指定したキーワードに関する最新ニュースを3つ集め、その要約を報告させる。
- 設計図(プロンプト):
あなたは、優秀なリサーチアシスタントです。 以下の手順で、最新ニュースの調査と報告を自動化してください。 1. `search`ツールを使い、「AI 最新動向」というキーワードで、過去24時間以内のニュースを検索してください。 2. 検索結果の上位3つの記事のURLに、`browser`ツールでそれぞれアクセスし、内容を読み取ってください。 3. 各記事の内容を、それぞれ300字程度で要約してください。 4. 最後に、3つの記事の「タイトル」「URL」「要約」をセットにして、私に報告してください。
ワークフロー2:ブログ執筆を加速させる「構成案ジェネレーター」
- ゴール:書きたいブログのテーマを伝えるだけで、SEOに強い構成案と導入文を自動生成させる。
- 設計図(プロンプト):
あなたは、SEOに強いプロのブログ編集長です。 以下のテーマで、読者が最後まで読みたくなるようなブログ記事の構成案を作成してください。 # テーマ 「ManusとNotionを連携させて『最強の第二の脳』を構築する方法」 # ワークフロー 1. まず、このテーマで上位表示されている競合記事を`search`ツールで3つ検索してください。 2. `browser`ツールでそれらの記事を読み込み、共通して含まれている「見出し」や「キーワード」を分析してください。 3. 分析結果を基に、読者の検索意図を満たす、最適な記事構成案をH2、H3の見出しレベルで作成してください。 4. 最後に、読者の心を掴む、魅力的な導入文(約300字)を作成してください。 5. 以上の成果物をまとめて報告してください。
ワークフロー3:面倒な議事録作成を丸投げする「AI書記」
- ゴール:会議の録音データ(テキスト化済み)を渡すだけで、要点をまとめた議事録を自動作成させる。
- 設計図(プロンプト):
あなたは、非常に優秀なビジネスアシスタントです。 添付の会議録音テキスト(meeting_transcript.txt)を読み込み、以下の形式で議事録を作成してください。 # ワークフロー 1. まず、`file`ツールで`/home/ubuntu/meeting_transcript.txt`を読み込んでください。 2. テキスト全体を精読し、議論の要点を特定してください。 3. 「決定事項」と「ToDo(担当者と期限も含む)」を明確にリストアップしてください。 4. 最後に、以下のフォーマットで議事録を整形し、`meeting_minutes.md`としてファイルに出力してください。 # 出力フォーマット - **会議名**: - **日時**: - **出席者**: - **決定事項**: - [決定事項1] - [決定事項2] - **ToDoリスト**: - [タスク1](担当:〇〇、期限:YYYY/MM/DD) - [タスク2](担当:△△、期限:YYYY/MM/DD)
まとめ:あなたはもう「AI使い」ではなく、「AIの設計者」だ
今回は、Manusの真価を引き出す「ワークフロー構築」について、その思考法から具体的な実践例までを解説しました。
お疲れ様でした!
もうあなたは、AIに一つずつお願い事をするだけの存在ではありません。
AIが動くための「設計図」を描き、複雑なタスクの自動化を指揮する、真のパートナーであり、プロジェクトマネージャーです。
- タスクを「分解」する
- ツールを「割り当て」る
- 全体像を「指示」する
この3ステップ思考法は、あなたが今後、どんなに複雑なタスクに直面しても、それを乗り越えるための強力な武器となります。
最初は小さなワークフローからで構いません。毎日の定型業務、面倒な情報収集、時間がかかる資料作成…あなたの身の回りにある「自動化できそうなこと」を探し、自分だけの「自動化の設計図」を描いてみてください。
その一枚の設計図が、あなたの働き方を、そして未来を、劇的に変えるのですから。



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